社会記事
ベトナム女性の悲劇
【海外事件簿】韓国で国際結婚の悪徳仲介業者が跋扈 花嫁のHIV感染情報伝えず (1/3ページ)
2010.8.28 18:00
このニュースのトピックス:◇注目事件ファイル
韓国で、警察が国際結婚仲介業者の一斉取り締まりに乗りだし、7月19日からの1カ月間に外国人62人を含む761人を不法営業などの疑いで検挙した。韓国では国際結婚で結ばれるカップルが近年急増。これに伴い、悪質な仲介業者が多数出現して社会問題になっている。中には外国人花嫁がエイズウイルス(HIV)に感染し、さらに結核を患っていることを隠して結婚を斡旋(あっせん)した業者もいる。背景には、「嫁不足」に悩む韓国農村部の男性と、「豊かさ」を求めて来韓する東南アジア女性の急増がある。(加藤達也)
韓国警察が一斉取り締まりに乗り出したきっかけは、ある事件だった。
「ベトナム人花嫁殺害事件」
韓国警察当局によると、先月8日朝、釜山市に住む韓国人の男(47)が、自宅でベトナム人の妻、タクティ・ファンウンオクさん(20)を殺害した。
タクティさんは、ベトナム南部カントーの農村出身。今年1月に結婚仲介業者の斡旋で、容疑者の男と知り合い、ホーチミン市で挙式。先月1日、韓国での新婚生活をスタートさせたばかりだった。
新婚間もない若い外国人花嫁が夫に殺害されるという事件の衝撃は大きかったが、それ以上に問題となったのは、動機だった。
男は警察の取り調べに、「幽霊が『殺せ』と命じる声が聞こえた」などと供述。韓国メディアは、男が「精神疾患を患っていた」と伝えている。
事件についてまず、大きく反応したのはベトナムだった。メディアが一斉に大きく報道。ベトナム外務省報道官が「事件に衝撃を受けた」と発言し、韓国側に調査と対応策の検討を求めたことを明らかにするなど、事件は外交問題化する懸念が生じた。
ベトナム側の反応を受け、韓国側は16日、柳明桓(ユ・ミョンファン)外交通商相が駐韓ベトナム大使と面会して遺憾の意を表明。再発防止を約束し、さらに同月23日に、国際会議で訪越した際にも、ベトナムのズン首相に対して再発防止に努める姿勢を示すなど、対応に追われた。
韓国では最近、国際結婚が急増。それにつれて、結婚仲介ビジネスの市場規模も拡大し、国際結婚にからむトラブルや犯罪も正比例して増加傾向にある。
韓国政府の推計では、2003年に約4万4千人だった韓国での外国人配偶者は、今年上半期時点で、13万6千人を超えた。
このうち、12万人が「妻」で、ベトナムからの「花嫁」は4分の1の約3万2千人に上るという。
国際結婚はなぜ急増しているのだろうか。その背景をソウル警察の関係者は「韓国では女性の社会進出や経済、社会活動の都市部集中現象が顕著で、農村部での嫁不足が深刻化している」と指摘。
さらに韓国企業はベトナムなどアジアの経済急進地域での進出戦略に成功しており、こうした地域では「韓国=成功者」のイメージが固定している。
この結果、ベトナム女性の間では、韓国人男性との結婚が一種のブームとなっているというのだ。
韓国警察は以前から、国際結婚に絡むトラブルや事件には仲介業者の関与が大きいとの見方を示してきたが、今回は「外交問題」に発展するおそれも出てきたため、「迅速かつ、強力な防止策を講じることになった」(ソウル警察幹部)という。
そして、一斉摘発の結果、あぶり出されたのは、「悪徳業者の質が、想像以上に悪かったことだ」と、捜査員は強調した。
国際結婚仲介業は所管の市や道の担当部局に届け出をすることになっているが、無届けで営業していた者が414人。「在韓ベトナム大使館公式委嘱」など、公的機関をかたった誇大広告をしていた者が195人など、多岐にわたる違反や違法行為が行われていた。
さらに深刻なのは、パートナー候補を紹介する際に、相手の健康状態や資産状況を適切に伝えないケースだった。
ソウル近郊の京畿道高陽市内の業者は、07年、韓国人男性に対し、HIVに感染し、肺結核を患っている女性を紹介。共同生活をすれば感染する可能性があることを知りながら、黙っていたことが明らかになった。
また、昨年9月には釜山の業者が、性感染症の梅毒に罹患(りかん)していることを知りながら、女性を斡旋していた。
韓国警察では、こうした事例について男性が重症化すれば傷害罪などの立件も視野に入れ、今後も監視していくが、ベトナムからの「韓(カラ)行き花嫁」は、今後も増加するとみており、入国・滞在資格審査の厳格化を打ち出した韓国法務省などと連携して、対策にあたる方針だという。